Up 「話の糸」立論の理由 作成: 2025-06-20
更新: 2025-06-20


    ChatGPT は,ユーザの入力したテクストに,論理的で構成的な応答を返す。
    この応答は,「1トークンずつ生成」のアルゴリズムになっている。

    通説は,「1トークンずつ生成」を,
       「次のトークンを確率で選ぶ」
    と説く。
    これは,つぎの立場である:
     1゜ トークン列 X に対し,「X の次のトークンになる確率」が,すべてのトークンにおいて定まる。
     2゜ 「1トークンずつ生成」 は,この確率を用いている。

    しかし,1゜はあり得ない。
      例. 「わたしは今日」の次が「山」になる確率は?
    そして,2゜のやり方で<論理的で構成的な応答>が生成されるわけがない。


    ChatGPT の<論理的で構成的な応答>に対する説明は,つぎの他には無い:
     1゜ 応答テクストは,生成する前から,決まっている。
     2゜ 「1トークンずつ生成」 は,このテクストの頭からトークンを1つずつ取り出している。

    「生成する前から決まっているテクスト」とは,記憶されているテクストである。
    したがって,「応答生成」は,つぎのメカニズムでなければならない:
     1. 記憶の中にあるテクストの糸口を摑む
     2. その糸を伝う


    こうして,記憶されているテクストは,
      「テクストの糸に乗るトークン列」
    が,これの絵図になる。

    翻って,Transformer の「学習」は,これを実現するものであることになる。
    即ち,「学習」で Transformer 脳がやっていることは:
     入力テクストのトークン分割
        [ t_1, ‥‥, t_m ]
     に対応するトークン点の列
        [ x_1, ‥‥, x_m ]
     を,このテク トの糸に乗せる。


    通説は,トークンベクトルに,「意味ベクトル」の読みをする。
    また,トークン点の分布に,「意味分布」の読みをする。
    しかし上の「糸」解釈は,通説のこの意味論を却けるものになる。

    「糸」解釈では,
     ・トークンは,アルファベットの文字の如し,
     ・トークンに糸を通すことは,,
      アルファベットの文字から語をつくるが如し

    トークンベクトルの値は,D次元数空間におけるトークン点の位置である。
    その位置は,「トークン点を糸に乗せる」を繰り返す学習によって収束するものである。
    トークン点の分布自体は,そこに構造や意味を見るものではない。


    こうして,「糸」解釈の立場では,Transformer のアルゴリズムに対する通論の意味論的解釈は,すべてご破産になる。
    「糸」解釈の課題は,Transformer のアルゴリズムを「糸」解釈で読めるようになることである。

    Transformer のアルゴリズムは,「糸」解釈で読めるか?
    読めるかどうかではなく,読めなくてはならない。
    ChatGPT の<論理的で構成的な応答>の説明は,「糸」解釈しかなく,したがって,「糸」は事実でなければならないからである。