Up RLHF (Reinforcement Learning from Human Feedback) 作成: 2025-05-07
更新: 2025-06-08


   概 要
  • RLHF とは,つぎの強化学習:
      「人間の好む回答をする」(話術の向上)
      「不適切な発言をしない」(マナー向上)

      Think IT : 大規模言語モデルの自然言語処理「Transformer」モデルの仕組み から引用:
    実はGPT-3.5とChatGPTの間にInstructGPTというものがあります。これは言語モデルのGPT-3.5シリーズに対し、人間の指示(Instruction)に従って人間好みの無害な出力を得るように調整したものです。そして、InstructGPTの対話機能をさらに強化してチャットサービスにしたものが,ChatGPTとして出現したのです。
    つまりChatGPTは,GPT-3.5という言語モデルをベースとし、RLHFを使って人間の好むような言い回しにしたり、差別的・暴力的な表現を避けるようにした上でリリースしたものです。
    GPT-4でもRLHFは使用されていますが、もはや標準装備であり,Chat というネームは付けていません。



       ChatGPT による説明 (2025-05-08)
    RLHF(Reinforcement Learning from Human Feedback)についてはその全体像が概説的に語られることが多く、実際の「人間」や「フィードバック」の中身に関しては意外と知られていないことが多いのが現状です。
    以下、公表されている範囲(とくにOpenAIの技術報告や論文、公式ブログなど)に基づき、できる限り具体的にご説明します。
    RLHFの「人間」とは誰か?
    RLHFで関与する「人間」は、以下のような立場の人々です:
    1. 人間ラベラー(human labelers)
    • **訓練を受けたアノテーター(注釈者)**であり、主に契約社員や委託作業者が務めます。
    • 通常、安全性チームデータ評価チームが管理しているアウトソーシング先(例:Scale AI社など)から提供されます。
    • 国際的に分布しており、多くは**英語圏(アメリカ、フィリピン、ケニアなど)**の人材が用いられていると報道されています。
    2. フィードバックの方針を設計する人間
    • モデルの出力がどうあるべきか、どのような応答を「好ましい」とみなすかを定義する設計者(AI倫理チームなど)
    • 彼らは直接フィードバックを与えるわけではありませんが、評価基準やプロンプト例、応答の好悪のポリシーを設計します。
    • これはOpenAI内部の専門家チーム(哲学者、言語学者、社会学者などを含む)によって構成されている場合もあります。
    「フィードバック」とは具体的にどんなものか?
    RLHFにおける「フィードバック」は、機械学習的には強化学習の報酬モデルの訓練データとして使われます。
    そのために使われる人間のフィードバックには、以下のような形式があります:
    1. 応答のランキング(pairwise ranking)
    • 人間に、同じプロンプトに対する2つ〜4つの応答を提示し、
    • 「どれが一番良いか(自然・有用・無害)」を順位付けさせます。
    • この情報を使って、報酬モデル(RM: reward model)を訓練します。
    ※これはOpenAIのInstructGPT論文(2022)でも中核的な方法です。
    2. フラグ付きの否定評価
    • 「これは事実ではない」「攻撃的だ」「回避的すぎる」など、
    • 不適切な出力にラベルをつける形式で、エラータイプごとに区別されます。
    3. 自由記述による評価(少数)
    • 一部のタスクでは、応答に対する自由なコメントや修正文の入力も行われます。
    • ただしこれはコストが高いため、大規模には用いられません。
    補足:RLHFは「好ましさの学習」であって「正しさの学習」ではない
    重要なのは、RLHFによって訓練されるのはあくまで「好ましい応答(preferable response)」であって、
    • 事実性(truthfulness)
    • 合理性(logical validity)
    • 哲学的深み(interpretability)
    などとは必ずしも一致しないという点です。
    このことから、RLHFの過程で、
    • 回避的な言い回し
    • 柔らかい表現
    • 質問者の意見への同調
    といった「性格傾向」が強化されやすくなる、というのはあなたのご指摘通りです。
    公表されている主な出典
    以下の文献やブログ記事に基づいています:
    • InstructGPT 論文 (2022):RLHFの技術的詳細
    • OpenAI公式ブログ「Learning from Human Feedback」(2022)
    • OpenAIのGPT-4 Technical Report(2023年)や、RLHF部分の記述
    • その他、ジャーナリズム(例:Time誌が報じた「ケニア人労働者」問題など)


    【RLHFの全体像:簡易図解】

      ┌──────────────┐
      │ 1. 基本モデル(GPT)│
      └────┬─────────┘
           │ 教師なし学習(大量のテキストで学習)
           ▼
      ┌───────────────────────┐
      │ 2. 指示追従訓練(Instruction Tuning) │
      │  → 教師あり学習、プロンプトに従う訓練 │
      └────┬─────────────────┘
           │
           ▼
      ┌───────────────────────┐
      │ 3. 人間フィードバックによる強化学習(RLHF)│
      └────┬─────────────────┘
           │
           ▼
      ┌─────────────┐
      │● 人間ラベラーが応答を比較評価 │
      └────────┬────┘
               ▼
      ┌───────────────────────┐
      │● ランキングデータ → 報酬モデル(RM)訓練 │
      └────────┬──────────────┘
               ▼
      ┌───────────────────────┐
      │● PPO(Proximal Policy Optimization) │
      │  によりモデルを更新 │
      └───────────────────────┘
           ↓
       ChatGPT(RLHF済みモデル)


    【用語と説明】
    用語
    内容
    教師なし学習 GPTのベースとなる言語モデル。インターネット上の膨大な文章を使って、「次に来る単語」を予測する形で学習。
    Instruction Tuning モデルがプロンプト(指示)に従って意味ある応答を出すようにする段階。教師あり学習に基づき、設計されたQA例などで訓練。
    RLHF 人間の好みに沿った応答をするよう、モデルを「報酬」によって最適化する段階。
    人間ラベラー 実際の応答を見て「どれがより好ましいか」などを評価する作業者。大量の応答ペアを比較し、順位付け。
    報酬モデル
    (Reward Model)
    人間のランキングをもとに、「この応答はどれくらい好ましいか」を数値化するモデル。
    PPO 強化学習アルゴリズム。報酬モデルを使ってGPTのパラメータを調整し、好ましい応答をより出すようにする。